金環日食の解説(2012年5月21日)

5月21日は、日本国内では25年ぶり、川崎市としては実に173年ぶりとなる金環日食が見られます。
太陽の観察には危険が伴いますが、安全な観察方法をよく知って、この珍しい現象を観察してみましょう。

速報画像

金環日食当日、科学館前広場で撮影した画像をご紹介します。

金環日食について

金環日食のしくみや、起こる時刻、川崎での見え方などの解説です。

日食について

日食は、太陽と地球の間に月が入りこみ、地球から見た太陽が月にかくされ、まるで欠けてしまったかのように見える現象です。太陽面の内側に月がすっぽりと入りこむと、かくした月のまわりで太陽の光が丸い環(わ)のように見えるため、金環日食と呼ばれます。

金環日食のしくみ

金環日食は、月の影が通る長細い地域でしか見られないめずらしい現象です。今回は、九州・四国・近畿・中部・関東・東北の各地方の一部の地域で見ることができます。川崎市は、全域が金環日食の見える範囲内に入っています。
金環日食が見える範囲の外側の地域でも、日本全国で部分日食が見られます。

金環日食の見える範囲

川崎市内での日食の様子

  • 日食開始は早朝
    川崎市では、日食は早朝の6時19分頃に始まります。しばらくは部分日食の状態が続きますが、月は少しずつ太陽の内側に入りこみ、太陽の欠け具合が少しずつ増えていきます。
  • リングがつながる瞬間に注目
    やがて、太陽の両方の縁が伸びていくようになり、リングとなってつながります。金環日食の始まりです。科学館付近(注)では、7時31分50秒と予報されています。
  • かたよりのない、まるいリングに
    月が太陽の内側に最も入りこむのは(食の最大)、7時34分17秒です。川崎市内は、金環日食の中心線が通っていますので、ほとんどかたよりのない、本当の丸い環のように見えるでしょう。
    金環日食が始まってから4分54秒後の7時36分44秒に、月が太陽の縁に再びかかり、環が途切れて金環日食が終了します。
  • 日食終了は9時過ぎ
    その後、しばらくの間部分日食が続いた後、9時2分には月が太陽から離れて、日食が完全に終了します。
    注:文中の金環日食の予報時刻は、科学館付近におけるものです。市内では、場所によって数秒~十数秒ずれることが予想されます。
    当日の日食の見え方
  • 見る場所についての注意
    日食が起こるときの太陽は、東のやや低い空にあります。この方向に高いビルや木などがあると、観察の邪魔となってしまいます。東の方向がひらけた場所で観察しましょう。
    また、通勤や通学の途中に、道路の脇などで見るのは危険です。安全に見られる場所を前もって確認したり、安全に見られる方法を相談したりしておきましょう。
  • 日食の予報時刻
    川崎市内のおもな場所での予報時刻です。川崎市内の他の場所で見る場合には、数秒から十数秒異なることが予想されますが、観察の際の参考にしてください(現在は、科学館付近と市役所付近の2地点について掲載しています)。 表:日食の予報時刻
    現象 科学館付近
    (多摩区)
    市役所付近
    (川崎区)
    部分日食開始 6時18分56秒 6時18分49秒
    金環日食開始 7時31分50秒 7時31分47秒
    食の最大 7時34分17秒 7時34分15秒
    金環日食終了 7時36分44秒 7時36分42秒
    部分日食終了 9時02分15秒 9時02分20秒
    金環日食
    継続時間
    4分54秒 4分55秒
    ※予報時刻は、国立天文台 相馬 充さん提供。月探査機「かぐや」が観測した月の縁のデータなどを考慮した最新の予報時刻です。このため、他のウェブなどで提供(計算)される予報時刻とは異なる場合があります。


金環日食の安全な観察方法

写真提供:塩田和生
金環日食は細い環のように見えますが、太陽の一部は明るく光りまぶしいままで、強い光と熱を放っています。まわりの風景もほとんど暗くなりません。

例えわずかでも太陽光線はとても強烈で、金環日食や部分日食を直接見ることは危険です。ほんの短い時間でも太陽を直接見ると目をいため、最悪の場合には失明してしまいます。必ず正しい方法で太陽の光を弱めて安全に観察してください。

日食観察グラスを使う

日食観察グラス(※注)という専用の器具を使用すると、太陽の光を安全に弱め、日食の様子を肉眼で観察することができます。これらは、紫外線、赤外線、青色光(ブルーライト)と言った目に有害な光線を弱める素材でできています。さまざまな形態のものが販売されています。
注:日食観察グラスは、製品によって「日食グラス」「太陽観察めがね」「日食観察フィルター」「しゃ光板」などと呼ばれます。 日食観察グラス

日食観察グラスを使う時のポイント 日食観察グラスも、間違った使い方をすると大変危険です。正しい使い方で、観察にのぞんでください。

  1. うしろを向いたり下を向いたりして、太陽を見ないようにし、日食観察グラスを正しく顔(目)にあてましょう。このとき、顔とグラスのすきまから太陽光が直接目に当たらないように気をつけます。
  2. 日食観察グラスを顔(目)にあてたまま、太陽をさがして日食を観察します。
  3. 日食観察グラスを使っていても、30秒に一度くらいは、太陽から目をそらして、休み休み観察するように心がけましょう。
この他、使用の際には、製品または添付文書などにある「安全性に関する内容や表示」を確認してください。また、使用説明にある注意事項にしたがって、使用してください。
これらのポイントに注意して、欠けていく太陽や金環日食になる瞬間を安全に観察しましょう。

日食観察グラスのお求め方法 望遠鏡ショップ、書店、家電量販店などの一部で取り扱っています。当館ミュージアムショップでも販売予定ですが、数に限りがありますので、あらかじめご了承ください。

次のような方法は危険です。
日食観察グラスの代わりになると思われがちな、以下のようなものを使って観察することは大変危険です。絶対におやめください。
従来、日食を見るために使用されてきた方法も、ほとんどが危険です。ご注意ください。
  • 色つき下じき(専用品を除く)
  • すすを付けたガラス板
  • 色ガラス
  • サングラス
  • ファッション用グラス
  • ゴーグル
  • 感光したネガフィルム
  • カメラ用のND(減光)フィルター
  • 重ねた偏光板

木もれ日を観察する

地面に映る「木もれ日」をよく見ると、その時の太陽の形が映し出されます。これは「ピンホールカメラ」と同じしくみです。
木かげをさがして、ぜひこの様子を観察してみましょう。
木漏れ日の観察方法

ピンホールを利用する

紙などに適当な穴をあけ、この穴に日光を通して地面などに映し出すと、その像が太陽の形に映ります。木もれ日と同様、「ピンホールカメラ」と同じしくみです。
なお、映し出す地面などは、白っぽい方が見やすくなります。紙などを敷いて映すと、より見やすくなります。
ピンホール(穴)を使った観察方法

穴の大きさは、数ミリ程度が適当です。ただし、穴と映し出す場所の離れ具合によって適当な穴の大きさが異なりますので、あらかじめ色々な大きさの穴をあけて準備しておくとよいでしょう。

(ファイルをダウンロード)金環日食観察案内パンフレット(PDF形式・1,330KB)
これらの内容を要約しましたパンフレットを作成しました。ご活用ください。


イベントなど

  • プラネタリウム
    4月・5月のプラネタリウムの一般投影では、金環日食を解説します。